ブルアカTVアニメ9話感想「アニメ先生はホシノにユメ先輩を想起させるための演出としてのキャラ造形」

金融資本による経済的従属支配を通した植民地化。土地は接収され金利は爆上げ、完全に詰んでしまった話。
カイザー社は元々アビドス砂漠に眠るという宝物(=「ウトナピシュティムの本船」)に目を付けていた。
そのためあくまでも「合法的な」手段として砂漠化に悩むアビドスに融資を行い、土地を接収していった。
真相に気付いた対策委員会メンバーがオアシスの調査に赴くが結果として金利を釣り上げられてしまう。
来月の利子は払えそうにもなく完全に詰んだ状況なのだが、あくまでも先生は具体的な方法を示せない。
それでも「みんなで」やれば何とかなる的な思想を持つ先生は性善説を取るユメ先輩を思わせるものであった。
だからこそホシノは過去のトラウマに駆り立てられ、結局は一人で自分の身を捧げてしまいそうである。

アニメ先生をフニャチンな感じにしたのって、ユメ先輩との類似性をホシノに想起させる演出なのかもしれない

アビドス砂祭りのポスターを破り捨てたことがユメ先輩を間接的に死に追いやった
  • 金融資本による合法的な経済的従属支配
    • アビドス高校は莫大な借金を抱えているだけでなく、利子支払いのために土地を売却しており、もう既に学校とそのわずかな周辺しか所有権を保持していなかった。カイザー社に目を付けられたのが運の尽き。カイザー社はアビドス砂漠に眠るという宝物(=「ウトナピシュティムの本船」)を探すため土地を接収していたのである。だがあくまでもそれは合法的な手段によるもの。金融資本による経済的従属支配を通した植民地化であったのである。真っ当な金融機関が金を貸さない状況で、最初は甘い言葉で融資を行うと言って近づき、結局は返済のために自ら土地を手放させていく。土地を失った人々は都市に出て低賃金労働者になるしかない。ホシノたちは転校した所で経済構造的に搾取され続けられるのである。ブルアカって本当に金融資本による合法的な搾取の話のパターンが好きよね。そんなわけでホシノたちはアビドス砂漠のオアシスに調査に赴いたものの藪蛇であり、真相を知ってしまったからこそ、結果として金利を釣り上げられるだけで終わったのである。もう来月の利子返済すらできない。完全にホシノたちは詰んでしまったのである。

  • アニメ先生の頼りなさはユメ先輩を想起させるための演出
    • ブルアカアニメで語られるのはユメ先輩と先生の類似性。アニメ先生はどこか頼りなくトンチンカンな発言も多く視聴者からは解釈違いだと叩かれ具体的に何も解決方法を見い出すことはできない。それでも対策委員会のメンバーを尊重し「みんなで」という所にコダワリを見せ、何とかなると明日を信じるのである。これはホシノにとってユメ先輩を想起させるものであった。ユメ先輩はふわふわとしておりアクチュアルな問題を考えることが出来ず夢や希望といった言葉を信じ性善説を唱えるのである。ホシノはそんなユメ先輩を好きだったからこそ、焦燥感に駆られる中で厳しい言葉をぶつけるようになってしまっていった。特にユメ先輩死亡の契機となったのがアビドス砂祭りのポスターを引き裂いたこと。ユメ先輩はかつてのアビドスの賑わいをポジティブなものとして捉えホシノと共有したかったのだが、歯がゆい思いを抱いていたホシノにとっては火に油を注ぐ行為であり、ユメ先輩の目の前でポスターを破り捨てるのである。ユメ先輩死亡後、遺品の盾を回収して生徒会室に戻ってみると、その机にはテープで修復されたポスターが残っていた。彼女は後輩にポスターを破かれたことで自己の責任を果たそうと覚悟を決めてしまったのだろう。つまりは(間接的にとはいえ)ホシノがユメ先輩を死なせたのであった。

  • 具体的な立案を出来ず「みんなで」を唱える先生
    • そんなトラウマを抱えるホシノだからこそ、頼りがいの無い先生がフワフワと具体的な対策を立案できないのに「みんなで」話し合えばきっと何とかなるとかほざいている姿を見て、ユメ先輩との類似性を想わずにはいられないのである。ユメ先輩は後輩のホシノにアビドスを残すために自らの命を捧げた。ホシノはユメ先輩を自分が死なせたという悔恨がある。先生を死なせたくない。だったらユメ先輩をエミュってる自分が、ユメ先輩と同じように自らの身を捧げる時が来たのだ。ホシノはまた明日と言って先生と別れたが、その明日が来る日は無いのであった。

9話見どころ

ホシノとユメ先輩のかけがえのない記憶
ホシノの理解者であったユメ先輩
ユメ先輩の遺品
カイザー理事に煽られ危うく暁のホルスになりかけるホシノ
遺品の盾を回収した後、生徒会室に戻るとそこにはテープで修復したポスターがあった
また明日というホシノが、翌日姿を見せることなど無かった