ウマ娘「ナリタトップロード」シナリオの感想・レビュー

他者からの期待を行動原理にするため人から頼られたら何でも一人でやろうとしてしまう少女の頑なさを解消する話。
初見では他者の期待に応えられなかったトプロの絶望が描かれるのかもしれないと思ってしまった。
また他者の期待に依存し自己が無いことに気付いたトプロのアイデンティティ崩壊を期待してしまった。
だがキャラストでは「何でも自分一人でやろうとする独りよがりな頑固さからの変容」がメインテーマとなった。
他者から頼られることに快感を覚えるトプロは何でも一人で抱え込み他者を頼ることができなかったのだ。
それ故、苦手なカラスを前にしゴミ捨てをすることが出来ず袋小路に迷い込むのだがトレに救われる。
また遊園地下見の際に損得勘定抜きにトプロのために働けるのが楽しいと述べたトレの言葉がトプロの支えとなる。
こうしてトレに甘えることを覚えたトプロは自分の苦手な領域でトレに頼ることができるようになり成長する。

ナリタトップロードのキャラクター表現とフラグ生成過程

期待を負担に感じるトレーナーの解放
  • 皆から期待されることをプラスに捉えるナリプとそれを重荷に感じてしまうトレーナーの対比
    • ナリタトップロードは他者からの期待に応えることを行動原理とする少女。普段の日常生活でも頼られることに生き甲斐を感じていた。一方でトレーナーはプレッシャーに弱く、自信も無く、他者からの期待を重荷として感じていた。キャラストの前半はそんなトレーナーさんを解放する話が主軸となる。アヤベさん、オペラオー、トプロの3人の併走を見てトプロの走りに惹かれたトレーナーは彼女の夢を聞き、2秒でスカウトに成功する。これまでスカウトに失敗し続けていたトレーナーさんは肩透かしとなるし、トプロの友達たちは頼りない新人トレを見て相応しくないと婉曲的に貶してくる。友人の反応を見たトプロは普通だったらもっとお互いを良く知ってから交際するのかもしれないと思うのだが、スカウトされて嬉しかったトプロはトレの期待にも応えたいと頑張る。これって単にトレーナーが期待してくれたから応えようとしているだけで当該トレーナーでなくても期待してくれれば誰でも良かったんじゃね?という危うさはあったが、トレはトプロの弱点を克服するメニューを熱心に作って指導する。トプロはギアの入れ替えやコーナリングに弱点があり、細かい作業が苦手だったのである。そんな弱点を克服するトレーニングは単純な作業の堅実な積み重ねであり、地味で地道な鍛錬はみんなの人気者であるトプロのファンたちには不合理で華やかさに欠けると思われたかもしれない。しかしトプロは飽きることなくトレーニングを着実にこなしていく。トプロは訓練に励むうちにトレーナーの人物像を理解するようになり、自分が結果を出せばその自信の無さを払拭できるかもしれないと奮闘する。模擬レースではトレーニングの成果を発揮し1等間違いなしという雰囲気が漂うのだが結果は敗北。だがトレーナーはトプロの走りを見て吹っ切れており、期待を重荷と感じる癖を解消していた。

 

他者からの期待に快感を抱き、何でも一人でやろうとする危うさ
  • 何でも一人でやろうとする独りよがりなトプロの解放
    • トプロは他者からの期待を行動原理にする少女であった。で、あれば当然「他者からの期待に応えられなかったらどうなるのだろう?」とか「他者の期待に依存し過ぎてしまっているため自分というモノが無いことに気付いたらどうなるのかしら?」という主題とは切っても切り離せないだろう。だがトプロのキャラストの後半でテーマとなるのは「独りよがりな頑固さ」からの解放であった。トプロは他者から頼られることを快感とする他者需要願望が強い少女であり、また気が利くため、結果的に雑用などを押し付けられることになることも多かった。スペックが高いトプロはそれらを難なくこなせていたため、他者に頼ると言う発想に欠けがちだったのだ。トプロは高スペックとは言え完璧超人では無いため、どうしても苦手分野はある。だがそれでも人には頼ることが出来ず自分一人でやろうとする頑なさがあり、それをトレーナーが解放するのである。トプロは友人のゴミ捨てを引き受けるのだが、カラスが苦手という弱点があった。ゴミ捨て場にいるカラスにビビッてしまいゴミ捨てを完遂できずにいた所、トレーナーに救われることになる。ここでトプロは自分が人に頼れないことを指摘されるのであった。またトプロは遊園地の幹事を頼まれ、その下見に行くのだが、トレーナーも同行することになる。トプロは自分の仕事にトレーナーを付き合わせていることに罪悪感を抱くのだが、トレーナーはトプロにじゃあトプロ自身は誰かのために働くことを嫌だと感じているのか?と問い、トプロのために働けることの楽しさを説く。トプロがビッグサンダーマウンテンで酔ってしまった時には優しく介抱し、トプロはトレーナーに甘えることを覚えるのであった。こうして独りよがりになりがちであったトプロの頑固さは寛解されていく。夏祭りイベントで細かい作業が苦手なトプロが精密射撃を頼まれた際、トプロはトレに頼ることができたのであった。これをきっかけに改めてトレーナーに信頼を感じたトプロは、一人で頑張るのではなく、トレと一緒に頑張りたいのだと想いを深めていく。キャラスト終局部において、一緒に、これからも、力を貸して欲しいとトレーナーに親愛を寄せるトプロの姿は必見である。
遊園地の下調べで他者(=トレ)に頼ることを覚え始めるトプロ
トレに甘えられるようになったトプロ
ひとりよがりだった過去を振り返るトプロ
トレーナーに想いを告げるトプロ

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