ウマ娘がイベスト「夏の陽は、青く凪ぐ」で「集団生活を通して社会性を身につけろ」と説教してくる。

単独行動好きで自分ひとりの時間を大切にしていたスズカが集団生活の楽しみを味わうようになる話。
夏合宿に参加することになったスズカだが、朝トレも夜トレも出来ず、ストレスを溜めて行った。
走ることが何よりも好きだったスズカは他者との共同生活よりも一人の方が好きだったのである。
人間が生きる以上、一人では生きられず、全てが他者との関わりにより成り立っているのは理解できる。
だがこれは正論パンチであり、空気を読んで場を乱さず調和を大事にするという同調圧力が激しすぎる。
集団生活において社会性を身につけろなんて言われなくても百も承知なんだけど言われても難しいのよ。
だからこそ個により集団からはじき出された少女を救うのがトレーナーの役割だったのに卓袱台返しされた気分。
道徳の教材のような説教ゲーであり尖っていたスズカが丸くなっていく様子は見ていて切ないものがあった。

道徳教材「集団生活を通して社会性を身につけろ」

エアグルーヴを使って説教してくるライター(おじさん)

今回のイベストは説教ゲーである。単独行動好きであったスズカが合宿当初は集団生活に窮屈さを感じていたものの、エアグルーヴの助言によりひと夏のイベントを過ごすことで転向していき、最後は集団生活に楽しみを見い出すという綺麗なシナリオにまとまっている。十代の夏にしか出来ない青春イベントを描いた成長物語としては十分に評価できるものなのだろう。だがどうにも説教臭が強すぎて、友達とワイワイ楽しく過ごす事こそが正義という価値観を押し付けてきているように感じてしまうのだ。

そもそもサイレンススズカマンハッタンカフェの魅力は低俗な大衆に染まらず、自分の世界を大切にしていることにあった。スズカは走ることこそが至上の喜びであったし、カフェは静かに落ち着いた場所で過ごすことを好んでいた。だからといって彼女たちは決して孤独ではなく、彼女らを分かってくれる理解者は少数ながらも存在していたし、トレーナーが彼女らを肯定することで個性は罪ではないことの証左となっていた。

だが今回のイベストはそんな情緒を一切合切破壊し、孤独やソロ好きはダメでーす、みんなと集団生活してくださーい、集団生活楽しいね!、集団生活で社会性を身につけられて良かったね!とかやってくるのである。いや集団生活大事だし、社会性必要だし、協調しなければ世間ではやっていけないけどさ。魅力であった長所の個性が磨り潰されていく様子は何だか寂しいものがあった。嗚呼、これがきっとファンアートで良く見る「丸くなったブライアンを見たローレルの気持ち」なのだろう。「ブライアンちゃんはね!~じゃなきゃいけないの!」ってやつ。それもまたキャラへの押し付けなのかもしれないが。

集団生活に馴染めないスズカ
自由と孤独でいいじゃないか
転向したサイレンススズカ