北へ。〜Diamond Dust〜「原田明理」シナリオの感想・レビュー

砂金採りに夢中になり定職に就かない父親をくも膜下出血で亡くす少女の話。
父親は死んだ妻との共通の趣味であった砂金採りに取りつかれていた。
明理はJKながら帯広老舗の銘菓店「柳月」でレジ打ちのバイトをして家計を支える。
主人公は酒に酔ってプラプラしていた明理の父と仲良くなるのだが・・・
なんと明理の父は病死し、明理は天涯孤独となってしまったのである。
その後明理はパティシエを目指すが東京に「来ちゃった」をして幕を閉じる。
コンテンツツーリズムとグルメが掛け合わされた事例として重要なシナリオ。

帯広の地域資源である「砂金採り」や「豚丼」を通して家族の絆を描く

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  • 原田一家の家庭の事情
    • 主人公と明理が出会うのは帯広の銘菓店「柳月」です。明理はそこでレジ打ちをしており、当初は帯広畜産大学に通う友人:大野が明理にアプローチをかけているという構図です。大野は即行で明理のことを諦めますが、主人公は合縁奇縁によって原田一家と仲良くなるのです。明理の父親は定職に就いておらず砂金採りに夢中になっています。その理由は、砂金採りが死んだ妻との共通の趣味であったため、砂金採りを生きるよすがとしたからでした。当然、貧乏生活を強いられているわけですが、明理は父親とワイワイ騒ぎながら明るく前向きに生きています。主人公とも仲良くなり、休日には3人で砂金採りに出かけるほど。家族で鮭のちゃんちゃん焼きを食べる場面は結構好きです。しかし父親はアル中気味であり、最終的にはくも膜下出血で死んでしまうのでした。主人公も死に際に立ち会うのですが、父親は娘と暮らせた幸せを告げてご臨終となるのでした。通夜と葬式の時に、父親のことを疎遠となっていた親族からボロクソに言われるのですが、ここで主人公が明理の心情を汲み思わず啖呵を切るのは若気の至りとはいえグッとくる展開です。
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  • 砂金と豚丼のエピソード
    • 夏休みが終わり東京に戻ってしまう主人公くん。天涯孤独となった明理の心の支えは主人公のみであり、辛い時には主人公との思い出を支えにしてきました。明理は父との思い出が残るアパートに住み続けることを決意。冬休みになり主人公と再会すると、今まで二人でできなかった季節イベントを一気にやろうとするのが微笑ましいですね。おせちを食べながらチョコレートケーキも食べる。
    • 明理編で重要になるのが砂金のエピソード。夏編の際、主人公と明理は砂金の大粒を見つけていたのですが、それを父親が発見したかのように見せかけていました。父親は自分が手に入れたと思っていたこの砂金を、なんと明理へのクリスマスプレゼントとしてペンダントに加工していたのです。偶然停電となり蝋燭を探していた明理は戸棚の中に隠されていたこのプレゼントを発見。父親の想いを噛みしめるのでした。しかもこの砂金がフラグ構築の重要な要素ともなっているのです。明理は主人公に東京で暮らそうと誘われますが、一度は尻込みます。しかしエピローグではちゃっかり東京にまでやってくるのです。この心境の変化は何か。それがこの砂金エピソードであり、「砂金は見つけ出さない限りただの砂」という父の言葉を思い出すきっかけとなり、明理は自分の主体的な意志で自分の大切なもの=主人公との暮らしを掴み取ったのでした。
    • そしてもう一つ重要なポイントが帯広のB級グルメで有名な「ぶた八」の豚丼。この豚丼は一朗から四朗までサイズがあって、明理は特別な時に一朗を食べたいのだとか。この「ぶた八」ですが、主人公が明理の父親から豚丼をおごってもらう時に登場し、あかりとの食事でもファミリーの思い出の地としてご一緒し、冬編の屋台村でも「ぶた八」に行き、さらに明理がパティシエのコンテストで優勝するとついにこの「ぶた八」の一朗を食べるのです。まさに地域資源がフラグ形成のなかで重要な要素を占めるシナリオと言えるでしょう。これはコンテンツツーリズムとグルメと重なり合う良い事例だと思われます。
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