雑録

まいてつ Last Run!!「ポーレットアフター」の感想・レビュー

人見知りが激しい娘に経験を積ませるべく家族で東北雪景色鉄道旅行をする話。
鉄道ならではの旅情と人との交わりを家族の成長に繋げて巧みに描き出している。
娘の対人関係の克服もさることながら主人公やポーレットも親として成長する。
最初から親なのではなく子育てを通じて父親・母親になっていく過程がステキ。
観光を楽しむツーリズム描写にも力が入れられており旅行ゲーとしても楽しめる。
主人公一家を見守るハチロクの一抹の寂しさも良く演出されていると思う。

周囲と比べて自分の娘の成長が遅く不安になるが、成長速度には個人差があるため相対的なものに過ぎないことを実感する話

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  • 娘の人見知りが激しい
    • 鉄道を利用した観光振興による地域社会の活性化という課題に取り組む中でついに結ばれた主人公とポーレット。二人は子宝に恵まれ家族を形成し、実家の右田家を始めとする育児の支援もあり、仕事と家庭を両立させてきました。しかし娘のひかりは愛情たっぷりに育てられたため、その愛情を空気のように思っており、極度の人見知りになってしまったのです。ポーレットが2期8年の任期を全うし、退任式が開かれますが、臆病なひかりは大勢の前で花束を渡しに行くことすらできなかったのです。主人公とポーレットはひかりの対人関係スキルを危惧し、夫婦会議を開きます。ポーレットが言うには、自分のアイデンティティ形成の核になったのは父親との鉄道旅行であったとのことで、東北雪景色旅行を決行することになります。(以上体験版まとめ)

 
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  • 「途中どんなに遅れても」
    • 旅は道ずれ世は情け。鉄道旅行は人との交流を生み出すものです。検札の車掌さん、遅延のため満員となり乗り合うことになった行商のお婆さん、旅先でのカップル、こけし作り体験の職人さん、旅館の仲居さんなど様々な人たちと交流していくことになります。おっかなびっくりでビビりまくりのひかりちゃんの様子を暖かく見守りましょう。遅延で乗り合わせたお婆さんとの交流のなかで、鉄道は走り続ければ終着駅に辿り着くという思想が子育てにも当てはまると実感していくことになります。主人公やポーレットは自分の娘の成長が遅いのではないかと不安視していましたが、成長速度は人それぞれで相対的なものなのです。大切なのは進み続けること。失敗しても良い。そのことを改めて実感していくのでした。
    • 子育ての難しさを描くハイライトは旅館の仲居さんイベント。観光イベントのこけし作り体験の中で、山形県の特産品である首を回すと音が鳴るこけしの絵付けをしたひかり。宿屋の部屋に通された際に、若手の仲居さんがっこのこけしを使ってひかりをあやしてくれるのですが・・・なんと、ひかりは癇癪を起してしまうのです。なんで!?慌てる仲居さんとこの作品の消費者たち。何でも自分のこけしを一番に鳴らしたかったのだとか。ここら辺、子どもの不可思議さというか、わけのわからなさを巧みに表現していると思います。本当に子どもは大人では理解できない感受性を持った生命体だと思います。それでも切って捨てるのではなく子どもの言い分を理解しようとし、きちんと向き合ってあげられるのが主人公とポーレット。ひかりにも分かるように教え諭すのでした。
    • そんなひかりが精神的成長を見せるのが、帰りの車内。別の母子が雪うさぎを作り車両内の窓際に置いておいたのですが、勿論そんなものは溶けるわけでして・・・。しかし子どもは自分が寝ている間に溶けてしまったので、納得いかず泣き出してしまうのです。困り果てる母親を前にして、ここでひかりがケアに乗り出し、泣いている子どもをあやします。今まで身内以外の他者と関わり合うことのなかったひかりが同年代の子ども同士でコミュニケーションに成功した瞬間でした。

 
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  • 家族旅行後
    • 家族旅行後、そこには精神的に成長したひかりの姿が!非日常の中での様々な経験が人を大きくしたのです。そんなひかりの様子を見て子どもの成長というものに感激する主人公に対し、ハチロクは主人公もまた親として成長してきたと応じます。主人公は自分たちが死んだ後もハチロクに娘を託せると頼みますが、耐用年数を超えているハチロクはむしろ右田一族の記憶の中に自分を継承していって欲しいと望むのでした。このハチロクの言葉は主人公に届かず、代わりに日々姫が聞くことになるのですが、一抹の寂しさが感じられる名場面となっています。
    • 最後は湯医学園80周年おめでとう式典。この式典で花束を渡す大任がひかりに下されます。ポーレットの市長退任式ですら母親に花束を渡せなかったひかり。見ず知らずの学園長(偉いオッサン)に花束を渡せるでしょうか?怖気づくひかりに対して主人公は後押しをします。旅行での経験を経たひかりは自らの力でその大任を受け、無事に贈呈を成功させるのでした。「式典における花束の贈呈」が対比的に表現されることで、旅行で得たひかりの成長が際立つ幕引きとなっています。

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