まいてつ Last Run!!「ハチロクアフター(実質オリヴィ√)」の感想・レビュー

経年劣化し寿命を迎えつつある炉利BBAロボットの最期を看取る話。
「子孫を残せなくとも後世に伝えられるものがある」という事がコンセプト。
最後の鉄道業務を全うしながらオリヴィが息を引き取るシーンは感動を生み出す。
泣きゲー。お婆ちゃんが死ねば泣くに決まっているだろう。号泣。
だが最後は突如複製体(子ども)と転生体(本人)が出現し感動が踏みにじられる。
自らが描こうとしたテーマと自らが生み出した感動を自ら破壊していくスタイル。

寿命の近い自我のあるロボットが後世に繋ぐものは何か?

子孫を残すことだけが未来への継承なのではない

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  • 【1】レイルロオド(人型モジュール)の種の存続
    • アフターの冒頭は、ロボット(人型モジュール)であるハチロクが「赤ちゃん」を欲しがるところから始まります。勿論、人間である主人公と子どもを作れるわけはなく一抹の寂しさを醸し出します。そのような中で、主人公たちの地方鉄道に新たな汽車とロボット(人型モジュール)オリヴィが配属されることになります。主人公たちは喜んで迎え入れるのですが、何やらワケアリのようで、本人は元居た鉄道会社を棄てられたと思い込んでいたのです。そんなオリヴィを受け入れ、疑似家族を形成するところから始まります。(以上体験版の内容まとめ)

 
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  • 【2】寿命という有限性による死生観の表現
    • ハチロクは当初赤ちゃんを欲しがっていたこともあり、オリヴィに子どものように接します。しかし実はオリヴィは明治蒸気でありハチロクよりもずっと年上だったのです。さらに言えば、毎年検査が必要なほど劣化が激しく、寿命がまじかに迫っていました。この経年劣化によるロボットの「寿命」がハチロクアフターのテーマになります。死生観モノ泣きゲーですね。ハチロクも耐用年数を既に超えており、いつしかはオリヴィと同じ問題が現れて来るのは必定。と、いうわけで大宮の鉄道博物館に調査に行くのですが、分かったのは、自我を持ったレイルロオドはそれが既に新たな「種」であり、だからこそ危険視されてその技術が断絶されたという事でした。シナリオ中では、コアの再精錬が唱えられますが、オリヴィはその技術開発の実現まで冷凍保存されることを拒否し、残された最後の時間を全うすることを望みます。オリヴィが客車を引いた時期は人生の前半生であり、後半生は貨物の運搬や車両の入替のみを行っていました。そんなオリヴィちゃんが数十年ぶりに客車を引いて路線を走った姿は涙をそそります。

 
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  • 【3】自分が死んだとしても周囲に残せるもの
    • オリヴィ√において死生観の他にテーマとなるのが、マスターとレイルロオドの間の絆。オリヴィはアメリカ式の大量生産・大量消費を前提として作られたロボットであり、その特徴は汎用性にありました。どこにでも応用が利く反面、固定したマスターを持たず、流れ、流れてきたのです。そのような状況下において比較的長い間オリヴィとタッグを組んでいたのがムナカタであり、このオリヴィとムナカタの関係性が「後世に引き継ぐもの」に繋がっていくのです。即ち、オリヴィはムナカタから保線などの鉄道周辺に関する最新知識を伝授されていました。その知識をオリヴィが主人公たちに伝えることで自分の遺産としていきます。オリヴィは新たなレイルロオド;ニイロクを教導して自分の後継として育成するとともに、自身は保線担当に退きつつも最後まで鉄道業務に携わっていきます。乗務できなくなり汽車を降りてしまったとしても、最後の日まで鉄道に人生を捧げるオリヴィの姿を見よ!この保線業務編では、ムナカタが保線上がりの機関士であったことからオリヴィと再会することができ、嘱託として招き入れることになったので狂喜乱舞します。和解できてよかったね!

 

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  • 【4】尊厳死
    • そしてオリヴィは最後の時を迎えます。線路に原因不明の異常が続き、オリヴィたちが常に注意を払っていましたが、ある時ついに水蒸気爆発が発生。自然災害でありオリヴィたちが地域住民に注意を促していたので被害はゼロ。しかしオリヴィは無理して現場に出たため、ついに動かなくなってしまうのでした。ここでハチロクが「共感」能力を最大限に使いオリヴィの深層心理にまで下りていくシーンはOPのタイトル画面選択のCGにも使われる程の名場面となっています。これにより一命を取り留めることができたオリヴィは最後にムナカタに会うことができたのでした。終局部では死ぬ寸前のオリヴィを運転台に載せムナカタがⅨ号を走らせます。み鉄では入替機として路線を走ることもなかったオリヴィとⅨ号。それが客車を引いて走行する姿はまさにLast Runと言えるでしょう。もはや涙が止まりません。車窓からの美しい景色に彩られながら、ムナカタの腕の中でオリヴィは息を引き取ったのでした。

 
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  • 【5】感動を自ら踏みにじっていくスタイル
    • こうして涙、涙の感動のラストで幕を閉じた・・・かと思いきや、最後に蛇足が入ります。なんと機能停止したオリヴィから二つのコアが発生し、そこから次代のレイルロオドが生まれたのです・・・。え、ちょっとまって。オリヴィ√の強みというかウリって、子どもとかそういうんじゃなくて、「オリヴィがこれまで100年積み上げてきた鉄道知識が周囲に継承されていくことによって未来へと繋がる」ことだったのでは?だからこそオリヴィは子孫を残すことや冷凍保存されることは選ばず、最後の時を全うすることを選んだのですよね。それがオリヴィの「尊さ」を生み出し感動をよんでいたはずです(この読解は私の読み間違いだったのでしょうか)。
    • 唐突にこれまでのテーマを全否定して、子ども産まれたよエンドをしていくムーブ。しかもそれだけじゃなく、もう一つのコアはオリヴィそのものの転生体であることが匂わされており、「ただいまエンド」になっています!あれだけ機能停止(死)という有限性の中で「死生観」や「人間とロボットの間の絆」を論じたのに、アッサリご都合主義で、はい子供生まれましたー、転生してましたーとかいうオチ。私は暫く立ち上がれなかったよ。プレイヤーの皆さまはこのエンドについてどのように感じられたでしょうか?アリなの?

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