ウマ娘「サクラチヨノオー」シナリオの感想・レビュー

理想と現実。強くなったからこそ目標との差に絶望し諦念を抱くウマ娘の支えとなる話。
真面目で堅実が取り柄のチヨはトレセン学園に入学し自分が取るに足らない存在だと知る。
そんなチヨに夢を与えたのが、我らが激マブ!マルゼンスキーの走りだったのだ。
それ以来チヨは対策ノートを作り、たゆまぬ努力を重ねて、日々成長していく。
しかし、だからこそ、自己の能力限界を知り、世界が違うと絶望感に駆られてしまう。
心が折れかけたチヨに寄り添うのはトレーナーの役割。チヨに始原的感情を取り戻させる。
一人だとマイナス思考に陥りがちでも、支えてくれる人がいるから自分を信じられる。
果敢に激マブに勝利を挑んだチヨは敗北するも決意を新たにしトレーナーに専属を依頼する。
頑張るチヨに感化されたトレーナーは、トレノートを作り上げ、チヨの育成に邁進する。

サクラチヨノオーのキャラクター表現とフラグ生成過程

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理想と現実の差に絶望するチヨノオー
  • 真面目で堅実は才能に勝てないのか。住む世界が違う。
    • サクラチヨノオーは超コツコツ型の真面目で堅実な少女。幼き頃はそれで1位になれたのでしょう。しかし卒なくこなしてきた優等生が、進学先で壁にぶち当たるのはよくある事。チヨノオーも例外ではなく、トレセン学園ではone of themであり、大多数の中の一人に過ぎなかったのです。自分は何になれるのか。アイデンティティの危機に晒されたチヨの目標となったのが当時の競馬界でスーパーカーと称されたマルゼンスキー。その圧倒的な速さはチヨを魅了し、憧れとなったのでした。真面目で堅実が取り柄のチヨは、マルゼンスキー目指して、超コツコツ型努力を始めます。涓滴岩を穿つとはまさにこのこと。勉強でも運動でもセルフマネジメントできる子は伸びるものです。チヨは着実に力を伸ばしていき、日々成長を実感するのですが、だからこそ現実を知るのです。ガムシャラに憧れているだけならそれでもよかったのでしょう。しかしマルゼンとルドルフの競争を見たチヨは世界が違うと絶望感に打ちひしがれることになります。

 

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トレーナーに寄り添われ原初の気持ちを思い出す
  • 心が折れかけた時に必要な物。自分を信じてくれる存在。
    • 一連のいきさつを知ったトレーナーさんはチヨに寄り添い、その真意を引き出すことになります。チヨはトレーナーさんに語るという行為の中で自分の始原的感情を思い起こしていきます。どうしてマルゼンスキーにそんなにも憧れるのか。原初の気持ちを思い出すのです。こうして一念発起したチヨはマルゼンスキーに併走を頼むと日夜訓練に励んでいきます。チヨにとってこの併走は単なる練習ではなく本番そのもの。マルゼンスキーを打ち負かす勢いで勝負を仕掛けます。この場面の見どころはマルゼンスキーがチヨの本気をかぎ取るところ。ここの描写いいよね。おすすめ。激マブが激マブたる所以の描写がとても熱く描かれています。チヨの熱意は激マブを興に乗せたため、結果としてチヨは敗北することになりますが、それでも心はハレルヤさ。チヨのレースを見届けたトレーナーさんが静かに去ろうとすると、チヨは自分の専属になって欲しいと逆スカウトするのでした。

 

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逆スカウトするチヨノオー
  • たとえ遠回りでも信じてくれる存在がいれば、自分に負けず、投げ出さず、逃げ出さず、信じ抜くことが出来る
    • フラグ成立後はチヨとトレーナーがお互いを心の支えとして成長していきます。チヨノートならぬトレノートが爆誕するまでの秘話が語られるのです。父親が力士という設定をナチュラルに醸し出しながら相撲好きウマ娘のコーチをするチヨ……トレーナーさんが自分のために育成本を買い込んだことを知り感謝の想いを語るチヨ……その夜にメッセージを送ってくるチヨ……なんかもうこの時点で好感度マックスであり砂糖を吐きそうなイチャラブが繰り広げられていきます。チヨにとって本当に必要だったのは、自分の努力を認めてくれて信じてくれる人だったんだなぁと思うこと仕切り。ひとりで頑張り続けるのって辛いよね。ラストの合宿後の夏祭りもまたエモいことしきり。トレーナーさんとチヨノオーが協力して型抜きを攻略してわんこのぬいぐるみをゲットするのですが、そこでトレーナーへの心情を吐露するチヨの姿は一見の価値アリです。これはもう比翼連理といっても過言ではありません。語った後で急に恥ずかしさを感じ、わんこの台詞に仮託するところはグッとくる展開です。サクラワンコオーを掲げながら「遅咲きの桜もまた桜」という台詞は心に染みます。もう一度また人生を賭けて見る気にさせられたのでした。

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サクラワンコオー
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遅咲きの桜もまた桜

 



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