雑録

花咲ワークスプリング!「不知火祈シナリオ」の感想・レビュー

孤独を孤高と読み替えるハイパーツンドラめんどくさい少女のココロを雪融けさせる話。
祈さんシナリオを読んでいくと「どうみても祈さんは自分です」と思うプレイヤは多いかと。
山月記』読んでると「李徴は俺か!?」と思うのと同じパターンですね。
「自分が傷つきたくないから孤独を選んだ」系の物語ですが、そのぶん普遍性があるのです。
結構説教ゲー風味なところがあり、結局社会的連帯を説く結論に達するのも、お約束だ。
大切なものはいつだって面倒くさいものと共にある。

不知火祈シナリオの概要

  • 孤高少女雄弁ウザ子の悲哀
    • 雄弁ウザ子(本名;不知火祈)は孤高を気取ってマフラーをたなびかせるニンジャファイター。人間関係を構築することを極度に嫌い、独りでも生きていける!と豪語するぼっち系少女。孤独上等!その意気や良し。近年は直接的であれ婉曲的であれ「ぼっち」を批判する作品ばかり多くてげんなりしていたところだぜ。頑張れ、雄弁ウザ子!ぼっちを貫き通せ!!と応援していたのですが、結局のところ祈さんは人一倍の寂しがりやさんでもあるわけです。友達なんていらないイヤ!ウザイ!!と主人公くんを辟易する一方で、自分がどんなに突っぱねてもやってきてくれる主人公くんに安らぎを感じていくというアンビバレンツ。なんと祈さんはハイパーツンドラめんどくさい少女だったのです。・・・嗚呼、結局社会的連帯に辿り着くのですねー・・・。まぁセカイの全てを敵に回すかの勢いで祈さんが吐き出していく想いにはとても共感できてしまいますがね!!それだけに祈さんが思想を転向させられていく様子は、自分が説教されている気分になること請け合いです。とんでもない説教ゲー!!

私は人に迷惑をかけないように人と関わらないようにした。関わらなければ迷惑なんてかけようがない。なのに人は向こうから関わってくる。そして、自分の気に入らない反応が私から返ってくると私に不平不満をぶつけてくる。そっちから関わってきたくせに。面倒くさい。どうでもいいじゃない?どうして私に構うの?この世の大多数の人間は、なぜか自分が価値があると思ったものを他人と共有したがる癖があるようだった。でも私は共有なんてしたくない。自分の楽しみは自分のものでいい。同様に自分の痛みも苦しみも全て自分のもの。誰かと共有したって、その人が痛いわけでも苦しいわけでもない。痛いのも苦しいのも自分だけ。他の人はそんな人を見てただ同情しただけなのだ。そんなこと誰だって分かりそうなものなのに。どれだけ周りに共感する人がいても、最後は全部、自分一人で乗り切らなきゃいけない。だとしたら共感に一体どれだけの価値があるのか?
・・・
ない。共感に価値なんてない。誰かと手を取り合うことは素晴らしいなんて価値観に人と繋がりたいと思う人たちの私利私欲でしかない。手を取り合うことを押しつけてくる人間はきっと自分が正義であると思っているだろう。でも私にとっては悪だ。


  • 主人公くんの未練と怠惰に緩く生きてきた理由
    • 主人公くんは「関わった人間を簡単に見捨てられるほど、俺達は大人になれねーんだよ」との信条のもと、何度祈さんから拒絶されても立ち上がってきます。祈さんは主人公くんをウザイウザイと言いながらも心の底では求めており次第にココロを開いていきます。主人公くんも祈さんと休日に出かけてブラブラしたりトンカツを食ったりゲーセンで遊んだりしながら、祈さんと過ごす日常に幸せを見出していくのです。しかし祈さんは難攻不落かつ恋する乙女であったので、理想の恋人に課するハードルがあまりにも高いお姫様願望を抱いていたのです。所謂シンデレラコンプレックス。祈さんから覚悟を求められた主人公くんはこれまでテキトーに過ごしてきた自分と向き合わなければならなくなります。自分の尊敬する兄貴分を火事で亡くしていた主人公くんにとって、自分と向き合うためには「人が何故生きるのか、人生の生き甲斐とは何か?」という普遍的なテーマを掘り下げなければならなかったのです。それができないが故に、主人公くんは今までちゃらんぽらんに毎日を過ごすことで、煩悶をやりすごしていたのでした。祈さんと付き合うために主人公くんは今まで棚上げしてきた人生哲学に煩悶していくことになります。


  • 如何にして不知火祈は孤高となりしか
    • 主人公くんは煩悶の末に、祈のためには自分の全てを賭けられる→→祈が世界一という結論に達します。こうして主人公くんをウザイと言いながらもココロから求めていた祈さんとフラグが成立。しかし傷つきやすいガラスハートの祈さんは、ふとしたことでも自分が裏切られたと感じてしまうお年頃。主人公くんは幼馴染みの悪友A・Bに「祈さんとの事情」を話していたのですが、そのことを知った祈さんは「誰にも言わないで秘密にしてね!」という約束を反故にされたと感じてしまったのです。主人公くんのことは好きだけど、人間を信じることはできないから孤独に帰ろうとする祈さん。どうして祈さんは人間不信に陥ってしまったのでしょうか?それには兄からの呪縛がありました。
    • 祈さんは幼少期にとても生真面目な少女でした。厳しい親の言い付けを守らねばならず習い事も山ほどやらされていました。祈さんは幼いココロを疲弊させていったのですが、そんな少女の拠り所となっていたのが、兄の飛鳥の存在だったのです。飛鳥は要領が良く、親の言い付けもそれなりに流すことができ、人生に楽しみを見出してしました。そんな飛鳥を祈さんはココロから慕っていたのですが、飛鳥は自分がやりたいようにやっているだけであったのです。祈さんの気晴らしにゲーセンに連れて行ってくれたと思えば祈さんをほったらかして格ゲーに熱中する始末。そして何よりも祈さんが「裏切り」と感じたのが、兄の飛鳥が自分だけ親の海外への転勤を免れ、日本に残ったことでした。傷ついた祈さんはこれ以上傷つかないために孤高を選び取るのですが、そんな祈さんに飛鳥の呪縛が襲いかかります。†飛鳥「もしもお前が誰もいらないって言うなら、お前こそ誰からも必要とされないだろうよ」。そして不運は重なるもので、飛鳥は火事で死亡してしまい、この呪縛が飛鳥と祈が交わした最後の言葉となったのです。

飛鳥の言葉によって祈は呪縛を受けていた。
それを『自分が自分を必要とする』ことで何とか凌いできた。
だから『一人で満足する自分』を否定されると
祈は『誰からも必要とされない自分』になってしまうんだ。


  • 不知火祈の未練解消法
    • 祈さんの未練を解決するためには兄による呪縛から解放させなければなりません。しかしながら祈さんの兄である飛鳥はもう既に死亡しています。死人に口なしとはよく言ったもので祈さんは過去に囚われたまま前に進めないのです。こうした祈さんのために立ち上がるのが我らが主人公くん。選んだ手法は殴り合い!話してダメなら拳で語れ!!かかってこいとカラテカでもあるニンジャマスターいのりを挑発します。「祈が抱えているもの、それは未練だ。祈が何年もかけて溜め込んできた飛鳥への思いや感情は凝集し、自分でも打ち壊せないほど固くなっている。言葉で語り尽くしたくらいで崩れるような代物じゃない。祈の未練は拳に託してぶつける相手が必要なんだ」。こうして主人公くんと殴り合ううちに祈さんの未練は浄化されていきます。そして主人公くんもまた愛する女のために一生懸命になるという人生の生き甲斐を獲得し、進めずに停滞した状況から歩き出すことが出来たのでした。「大切なものはいつだって面倒くさいものと共にある。片方だけを自分のものにしようと、そう都合よくはいかない。だったら俺は、両方を抱きしめよう」とハッピーエンドを迎えます。

 

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