ガラス姫と鏡の従者「ベルナデッド・ヘンリエッタ・アイゼルストン」シナリオの感想・レビュー

権謀術数渦巻く宮廷生活のトラウマにより笑えなくなってしまったガラス姫の話。
ベルナデッドは第二王女でありながら第一王位継承権を保有していた。
その理由は姉のエラは妾の子であり、妹のベルが正妻の子であったからである。
宮廷に入ったエラは陰謀に巻き込まれてベルに毒を盛るように指示される。
しかし純粋にエラを慕うベルを見て、エラは自ら毒を飲んで庇ったのであった。
エラ自身が毒を盛ったことを知らないベルはこのことがトラウマになってしまった。
一方のエラも同様であり、エラは能面のような笑顔を張り付け続けるようになる。
笑えなくなった妹と笑う事しか出来なくなった姉の和解が描かれることになる。

ベル「王権強化による封建的分権社会の統合」VSエラ「上からの革命による王侯貴族制そのものの廃絶」

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  • (1)心から笑えなくなったガラス姫
    • ベルナデッド(通称ベル)は小国のお姫様。主人公とは幼少期に泣いている所を慰めてもらった過去がありました。ベルは王侯貴族に相応しい淑女教育を受けるのですが、主人公との思い出を心の支えに厳しい指導を乗り越えて完璧超人に成長したのです。しかしながらその代償として心から笑うことができなくなり、ガラス姫になったのでした(タイトル回収)。当初ベルは自戒の精神から主人公のことを敢えて無視していたのですが、求める気持ちを抑えることが出来なくなります。また主人公も自分が従者を目指した根源的理由がベルの存在であったことを吐露し、その側に仕えたいと涙を拭います。こうして主人公はベルから専属従士として任命され、おそばに侍ることとなったのでした。
  • (2)異母姉妹問題
    • ベル√における根本的なテーマは姉との和解です。ベルとその姉エラはかつては仲良し姉妹だったのですが、王侯貴族にありがちな権謀術数によって微妙な関係になってしまいました。ベルとエラは異母姉妹であり、姉のエラは妾の子であり、妹のベルが正妻の子でした。王は妾がエラを身籠ったことを知らないまま離縁したのですが、後にエラの誕生を知るとと宮廷に招き入れることとなります。純粋なベルはエラによく懐き、姉を慕っていたのですが、エラは妹に毒を盛るように命じられます。しかし土壇場になってベルに純粋な好意を向けられたことで考えを改め、自ら毒を飲んだのでした。幸いエラは一命をとりとめるのですが、ベルは自分を庇って姉が死にかけたと思い込み、エラもまた妹に毒を盛ってしまったことを後悔したのでした。こうして二人の姉妹の関係性は微妙なものとなってしまったのです。
  • (3)絶対主義革命かブルジョワ革命か
    • ベルとエラが和解する為には、本国における王侯貴族の派閥問題を解決しなければなりません。ベルが選んだ道は王権の強化にありました。ベルの国は中世封建制のように王権が弱く貴族が幅を利かせる分権社会にありました。そのためベル自らが王位を継承して、自らのカリスマにより貴族からの協力を取り付け、王権を強化することで国内の安定を図ることを目指します。所謂主権国家(国王主権)というやつ。しかしこれは国王となるベルに多大なる負担がかかり、また未来の子どもたちにも負担を強いることが予想されるものでした。そのため、エラはベルに重い負担など持たせたくありませでした。それ故、エラが目指したのが王侯貴族そのものの廃絶というものでした。現代社会において特定の家柄の支配者が国内を統治するなどおかしいと考え、国民に主権を譲渡し、王侯貴族そのものを滅ぼそうとしていたのでした。
  • (4)妹と姉との和解
    • こうしてベルとエラの攻防が繰り広げられるのですが、最終的に姉を思う妹の心が勝利します。ベルは敵対することになったエラにさえも真摯な想いで国内の安定のための協力を請うのです。社会変革は一朝一夕になるものではなく時間をかけて行っていく必要があるのだと。自分が国王になるのは負担もあるけれども覚悟と決意をもって教育を受けてきたのであり主人公と共に背負いたいのだと。こういった趣旨のようなことを述べます。エラは最初から妹のことが大好きで、妹のために国の制度を王侯貴族を滅ぼそうとしていましたので、妹が自らの意志で国を背負うというのなら、協力することはやぶさかではありません。こうして二人の姉妹は和解し新たな時代が始まるのでした。

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