WWⅡ関連

吉田裕、森茂樹『アジア・太平洋戦争(戦争の日本史23)』、吉川弘文館、2007

参考になった箇所をまとめておく。 帝国日本の欠陥 明治憲法体制の問題点 「統帥権独立」の始まり 明治憲法の分立制に対する井上毅の説明 明治憲法体制下におけるリーダーシップ 陸海軍の対立、陸軍省と陸軍参謀本部の対立、海軍省と海軍軍令部の対立 陸海軍…

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』(岩波新書、2017) 第三章「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」(pp.143-204)

植民地帝国日本の始まり 「遼東半島還付が日本政府や国民に与えた深い挫折感は、日清戦争後に出現した植民地帝国の実体そのもの(いわば即時的な植民地帝国)を、自覚的な植民地帝国(いわば対自的な植民帝国)に変える内面的動機となりました。これによって日本…

加藤聖文『「大日本帝国」崩壊』(中公新書、2009)

本書の趣旨 大日本帝国とは何だったのか、その本質はどこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、これらを明らかにする。 以下 参考になった箇所抜き書き 満洲国崩壊の意義 「満洲は朝鮮や…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第四章「ポツダム宣言の受諾」(151-214頁)

本章の趣旨 日本降伏の要因に、原爆要因やソ連要因だけではなく、本土決戦要因と条件要因を加えて考察する。 本章の視覚(1) 昭和天皇の決断に最も大きな影響を与えたのは、実は本土決戦要因であった。 実際、8月10日の御前会議において、昭和天皇は、降伏理…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第三章「鈴木貫太郎内閣と対ソ外交」(109-149頁)

第3章の趣旨 米ソの軍事的圧力が、日本をソ連に接近させたという観点から、日本の軍事・外交政策の双方を再検討する。 そして、その政策は戦争終結の時期や条件の問題とどのような関係にあり、その中で、昭和天皇はどのような政治的役割を果たしたのかについ…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第二章「東条内閣の総辞職」(57-107頁)

第二章の概要 1944(昭和19)年7月7日、絶対国防圏の一角であるサイパン島が陥落し、7月18日、東条内閣は総辞職する。第二章は、反東条内閣は必ずしも和平運動ではないのではないかという疑問からスタートし、東条内閣瓦解の原因を明らかにする。 第二章で明ら…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第一章「統帥権独立の伝統の崩壊」(9-56頁)

第一章概要 1944(昭和19)年2月11日、陸軍大臣東条英機(首相、陸相)は参謀総長を、海軍大臣嶋田繁太郎は軍令部総長をそれぞれ兼任(併任)したが、これは異例の事態であり、統帥権独立の伝統に反したものだった。一章では、統帥部(大本営)の改革論に着目し、国…

細谷千尋『両大戦間期の日本外交』(岩波書店、1988) 第一章「二一ヵ条要求とアメリカの対応」(pp.19-45)

まえがき(pp.19-20) 概要 一九一五年の「二十一ヵ条要求」に対応してとられた、アメリカ政府の政策についての研究。 論点 中国政府から支援の多大の期待を寄せられたアメリカ政府が「二十一ヵ条要求」をめぐる日中交渉にどのような対応を示すか。 目的 1.先…

長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015年)より「第二章 昭和二〇年八月九日、ソ連軍、満洲に侵攻す」(pp.60-107)

『シベリア抑留』の第二章。第二次世界大戦中における日ソ関係、日ソ戦争、樺太・千島への侵攻、引揚げまでが書かれている。 以下、参考になったところなどのメモ ドイツ降伏後、日本が和平交渉の仲介役として選んだのはソ連 仮想敵国のソ連に仲介を依頼する…

小谷賢『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ、2007年)より「第四章 情報の分析・評価はいかになされたか」(pp.109-140)

1 陸海軍の情報分析 分析とはどのようなプロセスか(pp.110-114) 情報分析の重要性 分析・評価は、収集したインフォメーション(生情報やデータ)の断片をつなぎ合わせてインテリジェンスを生み出していく過程。 収集したインフォメーションを生かすも殺すも情…

小谷賢『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ、2007年)より「第三章 海軍の情報収集」(pp.79-107)

1 通信情報 X機関の設立(pp.80-84) 通信情報への着目の始まり 日露戦争中、ロシアのウラジオ艦隊「ロシア」、「クロンボイ」二隻が東京湾口外に出現した際、ウラジオ艦隊の発信電波を傍受。 組織的暗号解読活動の始まり 1929年、軍令部第二班(情報)に四課別…

長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015)における「まえがき」「第一章 ロシアの領土拡張およびソ連共産主義」(pp.22〜46)

この本の特徴 日本の戦争を欧米の侵略に対する抵抗であったと正当化し、シベリア抑留がソ連の国家的犯罪であるとする論調。 1.内容の要約 まえがき 本書の目的 シベリア抑留が少しでも多くの現代人に知られること。 シベリア抑留とは何か 概要 ソ連の対日参…

山中恒「「少国民」たちの植民地」(『岩波講座 近代日本と植民地7』岩波書店、1993年、pp.57-79)

本稿の趣旨 少国民世代に付与された植民地教材(教科書や児童書)は、植民地が内包する様々な問題を見て見ぬ振りさせる効果を持つものであった。 以下本文より 1930年代の少年向け娯楽小説及び漫画事情(pp.67-69) …1930年代というのは、大日本雄弁会講談社の少…

加藤陽子「大政翼賛会の成立から対英米開戦まで」(『岩波講座日本歴史 第18巻』岩波書店、2015年、1-48頁)

本稿の趣旨(p.1) 1940年9月の日独伊三国同盟調印、翌10月の大政翼賛会成立から、41年12月の対英米開戦決定に至る日本の政軍関係の特質を、国際関係をふまえつつ明らかにすること… 以下気になった箇所まとめ 太平洋空間における自由貿易から大陸空間の計画経…

後藤乾一「アジア太平洋戦争と「大東亜共栄圏」――1935-1945年」(『岩波現代全書044東アジア近現代通史(下)』岩波書店、2014年、1-46頁)

文章の趣旨 盧溝橋事件(1937年7月7日)を端緒とする日中戦争。それに先立つ2年間にその後10年の日本の原基が形作られた。それまでの時代との史的連続性をふまえつつ、1935年からの10年間、「アジア太平洋戦争と「大東亜共栄圏」」の時代を考察する。 以下気に…

山室信一「新秩序の模索 1930年代」(『岩波講座 東アジア近現代通史 第5巻』岩波書店、2011年、pp.1-41)

概要 世界恐慌の打撃により「危機の時代」を迎えたアジアにおいて模索された新たな地域秩序と国際体系が論じられている。 30年代の世界状況(pp.4-5) 30年代を世界恐慌から始まって一直線に第二次世界大戦に至った時代と短絡的にみることはできない。また、ド…

小林英夫『帝国日本と総力戦体制』(有志舎、2004年)

本書の趣旨(pp.2-3) 日本と中国・東南アジアのを複眼的に見ながら、ファシズム型総力戦体制の形成と崩壊(満州事変勃発から日中戦争・アジア太平洋戦争終結)の過程を、総合的・構造的に明らかにしていきたい。 その際、戦前・戦中のファシズム型総力戦体制と…

源川真希『総力戦のなかの日本政治』(吉川弘文館、2017年)

この本の視点(p.9) 筆者は、総力戦体制のもとで機能するいくつかの政策が、もともとは当時の資本主義的経済秩序の問題点を克服するための処方箋として提起されたことを重視する。そしてこれが読み替えられて、総力戦に転轍されていったものと考える。そして…

白木沢旭児『日中戦争と大陸経済建設』(吉川弘文館、2016年)

本書の趣旨 筆者は日中戦争の目的を中国の経済開発と捉え、日中戦争の重要な側面である長期建設、経済建設の実態を解明することを目指している。 第1部 貿易国家から生産国家へ 第一章 貿易構想の転換-英米依存体質からの脱却- 英米依存から東亜自給へ(p.59)…

富田武『シベリア抑留』(中公新書、2016年)

この本の趣旨 従来の「シベリア抑留」概念を、歴史的にはソ連による自国民の強制労働から繙くことで深め、地理的には南樺太や北朝鮮など「ソ連管理地域」に、検討対象も軍人・軍属の捕虜中心から民間人抑留者に広げることによって、抑留研究を前進させようと…

田中宏巳『山本五十六』(吉川弘文館 2010) より山本五十六と太平洋戦争の関係抜粋

1.日米開戦と真珠湾奇襲作戦 (1)日露戦争以後の対米戦方針 「漸減作戦」によって米艦隊を減勢し「艦隊決戦」によって決着させる (a)漸減邀撃作戦(ぜんげんようげきさくせん)とは? 優勢なアメリカ艦隊が太平洋を西進してくる間に潜水艦などによって徐々…

加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社 2009年 187-408 頁(3、4、5章、おわりに)

3章 第一次世界大戦 日本が抱いた主観的な挫折 植民地を持てた時代、持てなくなった時代 世界が総力戦に直面して 第一次世界大戦で何が変わったか? 世界:3つの帝国の崩壊=ロシアのロマノフ朝、ドイツのホーエンツォレルン朝、オーストリアのハプスブルク…

加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』朝日出版社 2009年 3-186頁(はじめに/序章/1章/2章)

はじめに 著者の専門;1929年の大恐慌、そこから始まった世界的な経済危機と戦争の時代、なかでも1930年代の外交と軍事。 30年代の教訓は2つある。 ひとつは、1937年の日中戦争の頃まで、当時の国民は、あくまで政党政治を通じた国内の社会民主主義的な改革…

松村寛之「戦争と国民意識」歴史学研究会・日本史研究会『日本史講座 第9巻 近代の転換』2005年 243-264頁

一 はじめに 日本人と愛国心 15年戦争は「誰一人、愛国心などには興味がない」ような人々によって遂行されたか? ←玉砕、特攻に象徴される狂信的愛国者たちというイメージ 愛国心、ナショナリズムとは何か ホブズボーム;近代のナショナリズムとは、民族的・…

松沼美穂「戦争終結とフランス再統一を見据えて」『帝国とプロパガンダ』山川出版社 2007年

ヴィシー政権とそれに代わるドゴール首班の臨時政府が共にプロパガンダ政策として植民地を重視しており、フランス再生の基盤たる帝国、偉大で忠実な帝国と一体性であるゆえに偉大なフランスという命題を掲げていた、としてそれぞれの意図について書かれてい…

加藤陽子『満州事変から日中戦争へ』(岩波新書)感想メモの断片

日中戦争は討匪戦と見なされており、報償・復仇という見解が強かった。 当時の日本の為政者や国民がいかなる経緯で復仇を主張するようになったかのかを解き明かすことがテーマとなっている。テーマの視点となっているのは以下の通り。 満蒙特殊権益 ヴェルサ…