Manchuria

「新京の観光について」(『新京の概況』新京商工公會、1942、106-112頁)

新京商工会から発行された『新京の概況』は建国10周年を記念として出されたものであり、「新京の観光について」という章立てが存在する。新京観光の意義、観光バスのすすめについて述べた後、各項目を立てて、それぞれの観光資源の説明を施している。その観…

【史料】『満支旅行年鑑』における新京の記述について

ジャパン・ツーリスト・ビューロー(東亜旅行社、東亜交通社)から出版されていた『満支旅行年鑑』は昭和14年版~昭和19年版まであるが、そこでは各都市の紹介及び戦跡に関する解説が掲載されている。各版ごとに記述内容は若干異なるが大筋はほぼ同じである。…

『南満洲鉄道案内』/『南満洲鉄道旅行案内』における新京(長春)の記述

『案内』は全部で合計7種類 『南満洲鉄道案内』(『南満洲鉄道旅行案内』)のシリーズは合計7種類発行された。それ即ち、1909年12月、1912年10月、1917年1月、1919年6月、1924年9月、1929年12月、1935年4月のものである。このうち「新京」は1935年4月のみで、…

『満洲グラフ』に見る満洲映画に関する記事

作業中。 満鉄発行のグラフ誌『満洲グラフ』において映画に関する記事はどのような内容だったかを分析していく。 「総務室弘報課映画製作所」(『満洲グラフ』第8巻第3号(通巻68号)、1940年3月号) 満鉄の総裁室弘報課映画製作所の事業紹介。 日本に於ける映画…

和田伝『大日向村』(朝日新聞社、1939年)

この作品の主題 長野県大日向村の満洲分村移民送出過程を広く伝えるために書かれた小説。後に舞台、国策映画、国策紙芝居とメディアミックス展開をした。 戦前日本の農村の状態、満洲移民などに関する箇所の抜き書き 資本家への隷属と格差の固定化 生産手段…

帝国日本の「人の移動」研究における戦後再入植について

思いついたアレコレを忘れないようにメモ。 「人の移動」 「人の移動」研究 人の移動から「境界」を問う/帝国崩壊と引揚から戦後日本社会に迫る 細谷亨「人の移動」(日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』岩波書店、2018年)において、近年の「人の移…

日満関係史フィールドワーク(4)「【探索】群馬県における満蒙開拓関連史跡」

群馬満蒙拓魂之塔と東宮鉄男の墓を探索した。 群馬満蒙拓魂之塔(群馬県長野原町北軽井沢) 群馬満蒙拓魂之塔の場所はココ! 場所が分からなくて困ったらgoogleで「36°29'25.6"N 138°35'46.2"E」を検索! 群馬満蒙拓魂之塔を求めて 日中国交正常化により日本に…

日満関係史フィールドワーク(3)「【訪問】大日向開拓記念館(長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉)」

満洲引揚者の戦後再入植の勉強の一環として軽井沢町を訪問した。 第三の大日向村はどこにあるのですか? 戦後再入植地「第三の大日向村」を求めて 大日向村は3つある。それすなわち満洲へ分村移民を送出した母村の大日向村(現:南佐久郡佐久穂町大字大日向)…

日満関係史フィールドワーク(2)「【探訪】旧大日向村(現:長野県南佐久郡佐久穂町大字大日向)」

佐久穂町で国策映画を見て来た話。 探索・調査 【探索】国策映画『大日向村』を求めて 満蒙開拓平和記念館において「大日向村」の特集を見る。大日向村は当時分村移民のモデルケースとして和田伝の小説をもとに国策映画や国策紙芝居が作られた。それらを視聴…

日満関係史フィールドワーク(1)「【訪問】満蒙開拓平和記念館(長野県下伊那郡阿智村駒場)」

長野県の阿智村に満蒙開拓を題材にした民間の博物館が存在する。 その満蒙開拓記念館とは一体どのようなものなのか。 実際に行ってきたので、雑感を記しておきたいと思う。 常設展示で冒頭からピックアップされていたのが、阿智村と同じ長野県にある大日向村…

『満洲グラフ』復刻版(ゆまに書房) 全15巻 総目録

復刻版全15巻 原書は12巻第1号まで 通巻114号 創刊 昭和8(1933)年9月15日創刊。 隔月発行から毎月発行へ 復刻版第2巻所収の第3巻第1号(通巻9号)(1935年1月30日発行)まで隔月発行。 以降、復刻版第2巻所収の第3巻第2号(通巻10号)(1935年5月1日発行)から毎月発…

『満洲グラフ』復刻版第2巻(ゆまに書房、2008年)

収録内容 第3巻第1号(1935年1月)~第3巻第9号 各巻まとめ 『満洲グラフ』第3巻第1号(9号) 昭和10(1935)年1月30日発行 『満洲グラフ』第3巻第2号(10号) 昭和10(1935)年5月1日発行 『満洲グラフ』第3巻第3号(11号) 昭和10(1935)年6月1日発行 『満洲グラフ』第3…

満鉄記録映画集 【10】~【12】

ケー・シー・ワークスの満鉄記録映画集見終わった。 第10巻は他の巻に比べて満洲国におけるレジャーの娯楽的楽しみがピックアップされている。 満洲国の観光だと忠霊塔の慰霊や戦跡見学、産業や工場の視察や開拓村訪問が強調されがちなので貴重。 娯楽や楽し…

『満洲グラフ』復刻版第1巻(ゆまに書房、2008年)

復刻版第1巻収録内容 第1巻第1号(1933年9月)~第2巻第6号(1934年11月) 各巻まとめ 『満洲グラフ』第1巻第1号(1号) 昭和8(1933)年9月15日発行 『満洲グラフ』第1巻第2号(2号) 昭和8(1933)年11月15日発行 『満洲グラフ』第2巻第1号(3号) 昭和9(1934)年1月15日…

満鉄記録映画集【8】・【9】

満鉄記録映画集第8巻 『満洲大豆』 『満洲大豆』(製作:満鉄映画製作所 製作年:昭和13年 約22分) 世界の大豆生産高の50%以上を生産していた満洲大豆の栽培、収穫、集荷、満鉄による混合保管と輸送。満鉄農事試験場の品質改良研究。大豆搾油の新旧様々な方…

満鉄記録映画集【6】・【7】

メモ:『満洲グラフ』を読んでいたら、満鉄映画製作所の作品を特集していく連載記事があったので、チェックが必要。あと同じくゆまに書房から『満洲映画』も復刊されているので読め。 満鉄記録映画集 第6巻 『開拓突撃隊ー鉄道自警村移民記録』 『開拓突撃隊…

満鉄記録映画集【4】・【5】

満洲国コンテンツとして映画作品を視聴している。 【1】~【3】はコチラ→満鉄記録映画集【1】~【3】 - memo 満鉄記録映画集 【4】 『満洲におけるリットン調査団』 『満洲におけるリットン調査団』(撮影:南満洲鉄道株式会社 製作年:昭和7年 約41分) 満洲…

石橋湛山『満鮮産業の印象』(東洋経済新報社、1941年)

概要 昭和15年5月から6月の約1月半にかけて、石橋湛山がダイヤモンド社の石山賢吉と共に北鮮及び満洲を旅した際の旅行報告書。 旅行範囲 東満及び南満。虎林、佳木斯、哈爾濱、新京、奉天、及び大連を繋ぐ線から以北、以西にはではなかった。 論調 一見する…

満洲国の旅行記・紀行文を読むと、移民村が観光資源化して訪問地の対象となっているので、整理のために満洲移民関係の年表を作っている。

満洲国の旅行記や記録文を読んでいると移民視察が一種の観光行動となっていることが分かる。 それ故、満洲移民の時系列を調べて年表を作成している。 満洲国の成立と試験移民 第二次若槻内閣 1931.9.18満洲事変 犬養毅内閣 1932.1 関東軍、「満蒙二於ケル法…

満鉄記録映画集【1】~【3】

演習の授業で「新聞報道における満洲国の旅行記・紀行文」について報告した際、教授から満洲国コンテンツとして映画も扱うよう助言を頂いたため見ることにした。 満鉄記録映画集 【1】 『建設工事』(製作:満鉄鉄道総局建設局 製作年:昭和14年 約22分) 熱…

【先行研究】「第八章 「帝国後」と満洲観光」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、233-280頁)

本章の趣旨 戦後における日本人の満洲観光を通して、「失われた帝国」の記憶の「刷り込み」が行われるプロセスを考察する。 参考になった箇所 戦後日本の満洲国ノスタルジー・ジャーニー 「〔……〕『満洲慕情』(1971年)は、「ふだん着のままで、満鉄の汽車に…

【先行研究】「第七章 もう一つの「代理ホスト」」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、213-232頁)

本章の趣旨 日本は帝国主義的侵略という暴力をとおして、欧米客を誘致するための「東亜観光ブロック」の実現をはかり、「東洋」における「代理ホスト」の役割を果たそうとした。 日本は、「西洋にとっての東洋」と「東洋にとっての西洋」の二つの顔を併せ持…

【先行研究】「第六章 「楽土」を走る観光バス」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、189-212頁)

本章の趣旨 観光による権力構造の再生産 内地客のまなざしの介入により、在満日本人は「代理ホスト」と化し、満洲を表現し、「翻訳」し、パフォーマティブに振る舞う。このような振る舞いのなかで、内地客/在満日本人/ネイティブの間の不均衡な権力関係が…

【先行研究】「第五章 「観光楽土」としての満洲国」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、159-188頁)

本章の趣旨 満州国時代の観光に関する、満洲国に向けるゲストの熱いまなざしや、満州国時代の代理ホストシステムについて考察している。 文化装置のコラボレーションが満洲への旅立ちを駆り立て、満洲という「野外劇場」への夢を膨らませたことを指摘してい…

【先行研究】「第四章 満洲観光の興隆」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、130-156頁)

満洲事変前までの満洲観光についての考察。割引切符による観光空間形成、満洲旅行ブームの様相、一般募集旅行団体の集客、修学旅行の実行システムが分析されている。 第一節 観光空間の形成 割引切符 1909年9月25日に、鉄道院から販売された「満韓巡遊券」を…

【先行研究】「第三章 満洲観光の担い手」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、98-129頁)

論文講読用のレジュメ 第三章要旨 (1)満鉄にある旅客課と鮮満案内所、満蒙文化協会、JTB大連支部の事業展開について。 在満観光機関と観光産業は1920年代に徐々に整う。満鉄と満蒙文化協会は宣伝誘致に力を入れ、JTB大連支部は斡旋案内と乗車券の販売の実務…

【先行研究】「第二章 満洲観光の誕生」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、42-97頁)

論文講読用のレジュメ 本章の趣旨 関東州の統治が軍政から民政に移行される前に行われた二つの観光旅行(「ろせった丸満韓巡遊」および満洲合同修学旅行)について分析している。 日露戦争後の満洲観光ブーム 1906年の満洲観光ブーム 著者は、当時の新聞を用い…

【先行研究】「第一章 満洲観光の前史」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、19-41頁)

論文講読用のレジュメ 第一章の趣旨 満洲観光の誕生を、日露戦争後の「ろせった丸満韓巡遊」と「満洲合同修学旅行」に位置付けた上で、満洲観光が誕生する前の満州への旅行はどのようなものであったかを明らかにしている。 江戸後期~日露戦争期における満洲…

【先行研究】「序章」(高媛『観光の政治学 : 戦前・戦後における日本人の「満洲」観光 』東京大学、2005、博士論文、1-15頁)

論文講読用のレジュメ 本論の趣旨 「観光の政治性」。「観光を取り巻く政治」と「観光の生み出す政治」を明らかにする。 第一節 本論の視座 「帝国圏」と「観光圏」 「〔……〕注目しておきたいのは、帝国の「帝国圏」と、帝国国民が旅先として視野に入れる「…

日本人の満洲国認識形成とコンテンツ・コロニアルツーリズム

【概念図】研究の方針とか 満洲国コンテンツの生産 1931年の満洲事変を契機に、翌1932年には満洲国が成立した。傀儡国家でもある満洲国に実態を持たせるため、その正当化が図られ、満洲認識を広めるために日本では様々な満洲国コンテンツが生産された。小説…