歴史

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第四章「天皇制統一政権の成立」(225-312頁)

概要 王政復古の大号令の思想は公議政体論と共通するため、慶喜の新政府への参加の是非が問われたが、薩長は強行的に旧幕府との戦争を引き起こした。故に新政府は批判を受けたため、自己の権力を正当化するため五箇条の御誓文や政体書を出した。だが、それら…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第三章「幕府の倒壊」(125-223頁)

概要 尊王攘夷運動は8月18日の政変、禁門の変により挫折した。第一次長州征伐に際し、奇兵隊などを組織したことで、藩主を擁する藩庁側に銃火を浴びえることができ、封建道徳的名分論に関して倒幕派は尊攘派よりも深みを増した。一方、条約勅許により開国は…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第二章「尊王攘夷運動の展開」(59-124頁)

概要 欧米列強の外圧よりも幕末日本にブルジョワ的萌芽があったという内在性を重視している。 当初、尊王攘夷論は幕府を強化するための理論的根拠だった。尊王攘夷はいつから反幕府となったのか。それは継嗣争いに敗れた改革が井伊攻撃の口実を違約調印に求…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018) 第一章「天保期の意義」(pp.37-58)

戦後歴史学・階級闘争史観・明治維新を絶対主義革命と捉える。 第一節 問題の所在 明治維新の起源は天保期(p.37) 「19世紀3,40年代の天保期の政治過程の中に、すでに明治維新の政治的本質の原型が形成されていた」 天保期の特徴(p.37) 「封建的土地所有と耕…

観光、ツーリズム、旅行の定義及び旅行業の歴史

はじめに 帝国と植民地間の人の移動について勉強しており、満洲におけるツーリズムを調べている。 前回の演習では、ツーリズムや観光の定義、また戦前日本の海外渡航制度についても述べる必要があるとの指摘を受けた。そのため、参考文献を読んでいるのだが…

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』(岩波新書、2017) 第三章「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」(pp.143-204)

植民地帝国日本の始まり 「遼東半島還付が日本政府や国民に与えた深い挫折感は、日清戦争後に出現した植民地帝国の実体そのもの(いわば即時的な植民地帝国)を、自覚的な植民地帝国(いわば対自的な植民帝国)に変える内面的動機となりました。これによって日本…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 序論(pp.19-36)

この本を読むにあたっては戦後歴史学についての知識が必要。 一 明治維新史の学問的確立の条件 明治維新史を含め日本近代史が最も未開拓な分野であった理由 「〔……〕第一に基礎史料が充分に公開されなかったこと。公開された少数のものも、その多くは、学界…

加藤聖文『「大日本帝国」崩壊』(中公新書、2009)

本書の趣旨 大日本帝国とは何だったのか、その本質はどこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、これらを明らかにする。 以下 参考になった箇所抜き書き 満洲国崩壊の意義 「満洲は朝鮮や…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第四章「ポツダム宣言の受諾」(151-214頁)

本章の趣旨 日本降伏の要因に、原爆要因やソ連要因だけではなく、本土決戦要因と条件要因を加えて考察する。 本章の視覚(1) 昭和天皇の決断に最も大きな影響を与えたのは、実は本土決戦要因であった。 実際、8月10日の御前会議において、昭和天皇は、降伏理…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第三章「鈴木貫太郎内閣と対ソ外交」(109-149頁)

第3章の趣旨 米ソの軍事的圧力が、日本をソ連に接近させたという観点から、日本の軍事・外交政策の双方を再検討する。 そして、その政策は戦争終結の時期や条件の問題とどのような関係にあり、その中で、昭和天皇はどのような政治的役割を果たしたのかについ…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第二章「東条内閣の総辞職」(57-107頁)

第二章の概要 1944(昭和19)年7月7日、絶対国防圏の一角であるサイパン島が陥落し、7月18日、東条内閣は総辞職する。第二章は、反東条内閣は必ずしも和平運動ではないのではないかという疑問からスタートし、東条内閣瓦解の原因を明らかにする。 第二章で明ら…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第一章「統帥権独立の伝統の崩壊」(9-56頁)

第一章概要 1944(昭和19)年2月11日、陸軍大臣東条英機(首相、陸相)は参謀総長を、海軍大臣嶋田繁太郎は軍令部総長をそれぞれ兼任(併任)したが、これは異例の事態であり、統帥権独立の伝統に反したものだった。一章では、統帥部(大本営)の改革論に着目し、国…

細谷千尋『両大戦間期の日本外交』(岩波書店、1988) 第一章「二一ヵ条要求とアメリカの対応」(pp.19-45)

まえがき(pp.19-20) 概要 一九一五年の「二十一ヵ条要求」に対応してとられた、アメリカ政府の政策についての研究。 論点 中国政府から支援の多大の期待を寄せられたアメリカ政府が「二十一ヵ条要求」をめぐる日中交渉にどのような対応を示すか。 目的 1.先…

小牟田哲彦『大日本帝国の海外鉄道』(東京堂出版、2015年)

趣旨 日本が植民地とした台湾、朝鮮、関東州、満洲、樺太、南洋において敷設した鉄道関係を紹介した書籍。ここではその中から、観光に関するものを抜粋した 以下、本文抜粋 満洲とプロパガンダ 満洲への旅行熱 「日露戦争に勝利し、ポーツマス条約によって満…

有山輝雄『海外観光旅行の誕生』(吉川弘文館、2002年)

趣旨 日露戦争後、新聞の発行部数の減少を食い止めるために創出された人為的なメディア・イベント、それが日本で初めての満韓への海外団体旅行であった。 最初の地域として満韓が選ばれたのは、日露戦争により帝国にのしあがったという大きな物語を追体験し…

【用語メモ】満洲 観光・博物館・紀行文関係/二〇世紀満洲歴史事典(吉川弘文館、2012年)より

帝国とプロパガンダについての研究。 大衆を啓蒙し、対外認識を形成させる装置として、観光・博覧会・紀行文などを扱う。 ここでは、日本帝国が満洲に対して帝国臣民にどのような満洲像を形成させようとしたかを見るために、基本的な用語を押さえていく。そ…

【サーベイ論文】千住一「日本統治下台湾・朝鮮・満州における観光に関する研究動向」(『奈良県立大学研究季報』、22(2), pp.83-96, 2012-01-31)における満洲に関する記述まとめ

本稿の趣旨 台湾、朝鮮、満洲の順で現在の研究を明らかにし、成果をまとめ、今後の課題を提示すること。 先行研究整理 満洲観光についての研究 (1)高媛「戦地から観光地へ:日露戦争前後の「満洲」旅行」(『中国21』29、2008、pp.203-218) 論文所在 愛知大学…

長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015年)より「第二章 昭和二〇年八月九日、ソ連軍、満洲に侵攻す」(pp.60-107)

『シベリア抑留』の第二章。第二次世界大戦中における日ソ関係、日ソ戦争、樺太・千島への侵攻、引揚げまでが書かれている。 以下、参考になったところなどのメモ ドイツ降伏後、日本が和平交渉の仲介役として選んだのはソ連 仮想敵国のソ連に仲介を依頼する…

小谷賢『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ、2007年)より「第四章 情報の分析・評価はいかになされたか」(pp.109-140)

1 陸海軍の情報分析 分析とはどのようなプロセスか(pp.110-114) 情報分析の重要性 分析・評価は、収集したインフォメーション(生情報やデータ)の断片をつなぎ合わせてインテリジェンスを生み出していく過程。 収集したインフォメーションを生かすも殺すも情…

小谷賢『日本軍のインテリジェンス』(講談社選書メチエ、2007年)より「第三章 海軍の情報収集」(pp.79-107)

1 通信情報 X機関の設立(pp.80-84) 通信情報への着目の始まり 日露戦争中、ロシアのウラジオ艦隊「ロシア」、「クロンボイ」二隻が東京湾口外に出現した際、ウラジオ艦隊の発信電波を傍受。 組織的暗号解読活動の始まり 1929年、軍令部第二班(情報)に四課別…

高媛「「楽土」を走る観光バス−1930年代の「満洲」都市と帝国のドラマトゥルギー−」(『岩波講座近代日本の文化史6』岩波書店、2002年、pp.215-253)

メモ 日本帝国の植民地観光史を通して、観光そのものが権力関係の強化と権力構造の再生産を行う装置であることを指摘している。 はじめに 本稿の趣旨 「…1930年代から「満洲」(現中国東北部、以下括弧省略)の六大都市で開花した日本語の観光バスを題材に、内…

長勢了治『シベリア抑留』(新潮選書、2015)における「まえがき」「第一章 ロシアの領土拡張およびソ連共産主義」(pp.22〜46)

この本の特徴 日本の戦争を欧米の侵略に対する抵抗であったと正当化し、シベリア抑留がソ連の国家的犯罪であるとする論調。 1.内容の要約 まえがき 本書の目的 シベリア抑留が少しでも多くの現代人に知られること。 シベリア抑留とは何か 概要 ソ連の対日参…

北アジア/北東アジア史に関する研究まとめ

整理中。 読んだ順はコチラ→http://d.hatena.ne.jp/mmm000mmm/archive?word=%2A%5B%CE%F2%BB%CB%5D 日本(時系列順) 前近代 古代 http://d.hatena.ne.jp/mmm000mmm/20100111/p1 http://d.hatena.ne.jp/mmm000mmm/20091228/p1 http://d.hatena.ne.jp/mmm000mmm…

柳沢遊・岡部牧夫「解説・帝国主義と植民地」(柳沢遊・岡部牧夫編『展望日本歴史20』東京堂出版、2001、pp.1-12)

本稿の趣旨 研究史の整理。「帝国主義と植民地」という方法的枠組による諸研究とその周辺の大まかな流れを抽出し、その特色を時期別に検討する。 植民地研究の出発点−1960年代後半 戦後植民地研究の理論的出発点 井上晴丸・宇佐美誠次郎『国家独占資本主義論…

山中恒「「少国民」たちの植民地」(『岩波講座 近代日本と植民地7』岩波書店、1993年、pp.57-79)

本稿の趣旨 少国民世代に付与された植民地教材(教科書や児童書)は、植民地が内包する様々な問題を見て見ぬ振りさせる効果を持つものであった。 以下本文より 1930年代の少年向け娯楽小説及び漫画事情(pp.67-69) …1930年代というのは、大日本雄弁会講談社の少…

金子文夫編「戦後日本植民地研究史」(『岩波講座 近代日本と植民地4』岩波講座、1993年、pp.289-317)における満州に関する記述について

本稿の趣旨 満州に関する戦後の研究動向を1960年代まで、1970年代、1980年代以降の三期に区分して概観すること 1960年代までの満州研究 全体的な特徴 めぼしい成果に乏しく、戦前の満鉄調査部を筆頭とする豊富な調査研究の流れはほぼ途絶状態 1.満鉄関係 安…

磯田一雄「皇民化教育と植民地の国史教科書」(『岩波講座 近代日本と植民地4』岩波書店、1993年、pp.113-135)

本稿の趣旨 植民地支配においてハードウェアとソフトウェアに例えられる軍隊と学校に関して、植民地の教育活動におけるその本質を、国史(日本歴史)教育とその教科書の側面からとらえること。 以下、満洲における歴史教育に関する事項まとめ 満洲国の学制につ…

山本裕「満州」(日本植民地研究会編『日本植民地研究の現状と課題』、アテネ社、2008年、pp.217-248)

はじめに 本稿の趣旨 「満州」研究についての現状と課題を述べていくこと 「東北アジア史」研究に関する詳細な文献リスト 上田貴子・小都晶子「東北アジア近現代史関係文献目録(一九九九〜二〇〇五年)」(近現代東北アジア地域史研究会『News letter』第一七…

加藤陽子「大政翼賛会の成立から対英米開戦まで」(『岩波講座日本歴史 第18巻』岩波書店、2015年、1-48頁)

本稿の趣旨(p.1) 1940年9月の日独伊三国同盟調印、翌10月の大政翼賛会成立から、41年12月の対英米開戦決定に至る日本の政軍関係の特質を、国際関係をふまえつつ明らかにすること… 以下気になった箇所まとめ 太平洋空間における自由貿易から大陸空間の計画経…

後藤乾一「アジア太平洋戦争と「大東亜共栄圏」――1935-1945年」(『岩波現代全書044東アジア近現代通史(下)』岩波書店、2014年、1-46頁)

文章の趣旨 盧溝橋事件(1937年7月7日)を端緒とする日中戦争。それに先立つ2年間にその後10年の日本の原基が形作られた。それまでの時代との史的連続性をふまえつつ、1935年からの10年間、「アジア太平洋戦争と「大東亜共栄圏」」の時代を考察する。 以下気に…