歴史

山室信一「新秩序の模索 1930年代」(『岩波講座 東アジア近現代通史 第5巻』岩波書店、2011年、pp.1-41)

概要 世界恐慌の打撃により「危機の時代」を迎えたアジアにおいて模索された新たな地域秩序と国際体系が論じられている。 30年代の世界状況(pp.4-5) 30年代を世界恐慌から始まって一直線に第二次世界大戦に至った時代と短絡的にみることはできない。また、ド…

山本有造「「満洲国論」―日本植民地帝国と「満州」―」(山本有造『「満洲国経済史研究」』名古屋大学出版会、2003、pp.3-25)

本稿の趣旨 日本植民地帝国50年の歴史における「満洲」の役割とその意味を概観…する。 「満蒙問題」とその展開 ―満蒙は日本の生命線― 日本植民地史、日本帝国史の課題 日本植民地帝国の構造を総括しこれを西洋列強の経験と比較すること 日本植民地帝国の世界…

安岡健一「戦後開拓と戦後海外農業移民」(蘭信三編『帝国崩壊とひとの再移動』勉誠出版、2011年、216-225頁)

本稿の趣旨(pp.216-217) 日本=過剰人口という命題が広く人びとをとらえた時代を、とくに戦後の開拓政策と移民政策からたどりなおしてみること。そしてそこから浮かび上がる、人間を「人口」として捉える国家と、日々を生き抜こうとする人びとの交差する関係…

小林英夫『帝国日本と総力戦体制』(有志舎、2004年)

本書の趣旨(pp.2-3) 日本と中国・東南アジアのを複眼的に見ながら、ファシズム型総力戦体制の形成と崩壊(満州事変勃発から日中戦争・アジア太平洋戦争終結)の過程を、総合的・構造的に明らかにしていきたい。 その際、戦前・戦中のファシズム型総力戦体制と…

源川真希『総力戦のなかの日本政治』(吉川弘文館、2017年)

この本の視点(p.9) 筆者は、総力戦体制のもとで機能するいくつかの政策が、もともとは当時の資本主義的経済秩序の問題点を克服するための処方箋として提起されたことを重視する。そしてこれが読み替えられて、総力戦に転轍されていったものと考える。そして…

山室信一『キメラ ―満洲国の肖像 増補版』(中公新書、2004年)

この本の趣旨(p.15) いったい、なぜ、中国東北部に満洲国という国家がこの時期、日本人の主導によって作られなければならなかったのか。その国家形成の過程はいかなるものであり、それに日本人や中国人はどうかかわったのか。また、形成された国家は、いかな…

「内原郷土史義勇軍資料館」訪問記・雑感

内原訓練所は満蒙開拓青少年義勇軍に応募した各道府県の青少年が満州に渡る前に訓練を受けた施設。 茨城県水戸市内原にあり、現在は郷土資料館となっている。 その足跡を体感するため、現地を訪問してきたのでメモしておくこととする。 満蒙開拓青少年義勇軍…

白取道博『満蒙開拓青少年義勇軍史研究』(北海道大学出版会、2008年)

本書の目的 政策意思の系統的把握を基軸として青少年義勇軍の送出過程を追究し、青少年義勇軍をめぐる基礎的事実を確定すること。 移民政策について 成人男性の送出形態 中国東北部を入植地とする移民……は、1936年に広田弘毅内閣が「国策」としての遂行をう…

蘭信三編著『帝国以後の人の移動 ポストコロニアリズムとグローバリズムの交錯点』(勉誠出版、2013年)

蘭信三「はじめに」より 「帝国以後の人の移動」という新視覚 従来、内地対朝鮮、内地対台湾、内地対満洲、朝鮮対満洲という二地域・国家間での人の移動を捉える研究蓄積は相当なレベルに達していたが、日本帝国内における人の移動の連関性をトータルに捉え…

寺林伸明「「満洲開拓団」の日中関係者にみる“五族協和”の実態」(寺林伸明・劉含発・白木沢旭児編『日中両国からみた「満洲開拓」ー体験・記憶証言ー』御茶の水書房、2014年、pp.319-346)

1994年における鏡友会員(鏡泊湖義勇隊・鏡泊学園の引揚者団体)に対するアンケート調査と訪問調査 移住の動機:小学校の勧誘・推薦、役場の募集によるものが36.4%、自身の積極的な理由をあげたものが31.8%。合計68.2% “五族協和”、“王道楽土”を信じたもの…

湯山英子「八紘開拓団の戦後における生活の再構築ー北海道静内高見地区を事例にー」(寺林伸明・劉含発・白木沢旭児編『日中両国からみた「満洲開拓」ー体験・記憶証言ー』御茶の水書房、2014年、pp.125-138)

戦後開拓事業によってに引揚者が入植したが、全戸離農となった北海道日高郡静内町高見地区の事例。 ※高見はもともとアイヌへの供与地だったが、昭和22年時にはアイヌはそこに定住していなかった(寺林伸明・劉含発・白木沢旭児編『日中両国からみた「満洲開拓…

湯山英子「北海道で語られてきた「満洲」体験」(寺林伸明・劉含発・白木沢旭児編『日中両国からみた「満洲開拓」ー体験・記憶証言ー』御茶の水書房、2014年、pp.113-124)

文献紹介。北海道で発表された体験談を時代ごとに整理したもの。 本稿の趣旨 北海道と満洲との関係を明らかにするうえで、満洲体験がどう北海道で語られてきたのかを整理し、検討する。 北海道は満洲への送出地域でもあり、引揚げ後の受け入れ地域でもあった…

麻田雅文『満蒙 日露中の「最前線」』講談社選書メチエ、2014

本書の趣旨 東アジアの国際政治史にロシアを位置づける試みの一環として、その鉄道を通じた影響力を探る。(p.5) 軌間の問題 清朝は世界で主流の標準軌(4フィート8.5インチ=1435ミリ)を採用していた。これに対しロシア帝国は、19世紀中ごろから広軌(5フィー…

寺林伸明・劉含発・白木沢旭児編『日中両国からみた「満洲開拓」ー体験・記憶証言ー』(御茶の水書房、2014年)

「開拓」とは何か しばしば北海道開拓のように「未開の原野を開拓した」というイメージで語られることもあるが、中国における「満洲開拓」の実態を知れば知るほど、「開拓」に文字がいかに空虚なものであったのかを実感することができる……中国において農民が…

小林英夫『<満洲>の歴史』(講談社現代新書、2008)

この本の趣旨 日本人の視点を意識した中国東北史を記述すること(p.4) 日本人の目から見た日中関係史の一翼を担う中国東北史の発展過程と、そこに関わった日本の夢と現実の考察(p.6) 17世紀における満洲 …満洲はヌルハチに起源をもつ清朝発祥の地として、満洲…

白木沢旭児『日中戦争と大陸経済建設』(吉川弘文館、2016年)

本書の趣旨 筆者は日中戦争の目的を中国の経済開発と捉え、日中戦争の重要な側面である長期建設、経済建設の実態を解明することを目指している。 第1部 貿易国家から生産国家へ 第一章 貿易構想の転換-英米依存体質からの脱却- 英米依存から東亜自給へ(p.59)…

加藤聖文『満蒙開拓団 虚妄の「日満一体」』(岩波現代全書、2017年)

この本の趣旨 満蒙開拓団の歴史を政策史の視点から検証すること。 開拓政策者たちの満蒙開拓団に対する認識(pp.vi-vii) 農林省経済更生部長小平権一の部下として開拓政策の実務を担い、満洲国開拓総局長を経て敗戦時に東満総省長だった五十子巻三…は…終生、…

白木沢旭児「植民都市・安東の地域経済史-2つの帝国のはざまで-」(白木沢旭児編著『北東アジアにおける帝国と地域社会』北海道大学出版会、2017年、pp.95-140)

概要 中国と朝鮮との国境に位置する中国側の都市安東は、中華帝国及び日本帝国の双方から強い影響を受けつつ都市形成を遂げたため、特異性を有する都市。そのような植民都市・安東の歴史を通じて北東アジアの帝国と地域社会を考察するという内容。 目的 安東…

ロシアにおける第二次世界大戦に関する歴史認識について

第二次世界大戦についてロシアとその他の国では歴史認識が異なる。またプーチンが愛国主義的歴史政策を取ろうとしているが、歴史教科書は複数解釈を取り上げようとしている。参考文献:立石洋子「現代ロシアの歴史教育と第二次世界大戦の記憶」(スラヴ研究 6…

ディビッド・ウルフ/半谷史郎訳『ハルビン駅へ 日露中・交錯するロシア満洲の近代史』(講談社、2014)

ハルビンはロシア帝国の外部に位置したので、リベラルな思想が育まれ、それが帝国にフィードバックされたという内容。 本書の概要 鉄道建設を主題とする「鉄道帝国主義論」。 主たる特徴は東清鉄道がひきおこした国際競争。満洲問題はある種の「競争植民地主…

満蒙開拓青少年義勇軍 虎山義勇隊開拓団(満州国東安省林口県虎山)に関するメモ

参考文献 群馬満蒙開拓魂之塔建立三十周年記念誌編纂委員会編『群馬満蒙開拓魂之塔建立三十周年記念誌 希望に満ちた満蒙開拓と終戦』(群馬県拓友協会 2004 pp.269-282) 1.会の名称 虎山会 2.創立年月日 1973年3月25日 3.隊員の県別人員数(合計300人) 群馬県1…

立石洋子「ロシアと第二次世界大戦の記憶」(2017年度成蹊大学後期公開講座)のまとめ

概要 ソ連/ロシアの各政権における第二次世界大戦に関する歴史認識の変遷 話の要旨 戦時中は戦争勝利のためイデオロギーが希薄化し愛国心が利用された。だが戦後のスターリン時代には思想統制が行われる。フルシチョフの雪融けにより戦争の見直しが行われた…

立石洋子「現代ロシアの歴史教育と第二次世界大戦の記憶」(スラヴ研究 62号 2015 pp.29-57)

はじめに 論文の趣旨 1990年代から現在までのロシアにおける第二次世界大戦の記憶をめぐる政治を、歴史教育と教科書を題材として分析すること。 1990年代の歴史教育政策や教科書の記述と近年の歴史教科書に関する政策を概観する。 2013/14年度に教育科学省の…

個人メモ ロシア/極東地域における歴史教育に関する研究のためのメモ

問題意識とキーワード ロシア 極東 歴史教育 満州 満蒙開拓 ロシア・ソ連・満州・教育に関する研究者 中嶋 毅→教員紹介 :: 中嶋 毅 | 首都大学東京 立石 洋子→法学部 教員紹介 - 成蹊大学研究者データベース 論文 中嶋毅「満洲国北満学院の歴史 一九三八-一…

池上俊一『王様でたどるイギリス史』(岩波書店、2017年)

この本の趣旨 イギリス王を辿ることを通して、イギリスの歴史に一貫して流れる文化や心性の特徴をあぶりだすこと 気になった箇所てきとうなメモ 集権的封建制度(pp.19-21) ノルマン朝初代ウィリアム征服王の時代。当初は地位が安定せず諸侯の反乱に悩まされ…

富田武『シベリア抑留』(中公新書、2016年)

この本の趣旨 従来の「シベリア抑留」概念を、歴史的にはソ連による自国民の強制労働から繙くことで深め、地理的には南樺太や北朝鮮など「ソ連管理地域」に、検討対象も軍人・軍属の捕虜中心から民間人抑留者に広げることによって、抑留研究を前進させようと…

相原秀起『知られざる日露国境を歩く』東洋書店、2015年

樺太、択捉、北千島(シュムシュ島・パラシムル島)にあった国境線をめぐるはなし。 著者が実際に旧国境線を訪問し、かつてそこにあった国境標石・碑文・旧跡を探す。 前半は樺太にあった国境標石を著者が探索・発見・保護・展示するまでの流れがメイン。 後半…

菊池伸輝「新自由主義・新保守主義の台頭と日本政治」(『岩波講座日本歴史』第19巻 岩波書店 2015)

この文章の目的 新自由主義の定義、新自由主義自体の変質やその推進者にとっての成功と失敗を、日本の経験に即して再検討し、今日の日本においてどのように新自由主義が展開しているのかを確認することを目的とする。 分析の仮設 1.経済危機や戦時体制の形…

カレル・チャペック(来栖継訳)『山椒魚戦争』(岩波文庫、1978)

ディストピアもの。資本主義を含め現代文明が行き過ぎた結果、山椒魚が人間にとって代わる。 しかし最終的に山椒魚も種族間戦争となって滅び、生き残ったわずかの人間がまた文明を築き始め、歴史は繰り返す。 現代世界のシステムそのものが、人間の根本的な…

田中宏巳『山本五十六』(吉川弘文館 2010) より山本五十六と太平洋戦争の関係抜粋

1.日米開戦と真珠湾奇襲作戦 (1)日露戦争以後の対米戦方針 「漸減作戦」によって米艦隊を減勢し「艦隊決戦」によって決着させる (a)漸減邀撃作戦(ぜんげんようげきさくせん)とは? 優勢なアメリカ艦隊が太平洋を西進してくる間に潜水艦などによって徐々…